2022年7月1日
絵本の世界 心に受け止めて(園長より)
♪水をたくさんくんできて、…♪プールからは子どもたちの楽しそうな水遊びの歌が聞こえてきそうです。季節は6月から7月へ移り、早くも夏空が眩しく輝いています。保護者の皆様には、いつも様々な面でご支援をいただき、感謝申し上げます。
先日、年長さんに私の大好きな絵本「つりばしわたれ」(長崎源之助作)を読んであげました。夏の山の風景の中で、子どもたちの心情が生き生きと美しく描かれている本です。昔、小学校3年生の教科書にありました。心に残っている素晴らしい本です。あらすじを紹介します。
「やーい、もやしっ子。くやしかったらつりばしわたって、かけてこい」と、山のこどもたちが はやします。「ふんだ。あんたたちなんかと、だれが あそんでやるもんか」トッコは、べっかんこしてみせました。吊り橋の下には、谷川がごうごうとしぶきをあげて流れています。トッコは足がすくんで渡ることができません。お母さんの病気の為に、山に住むおばあちゃんの家にあずけられた女の子トッコ。トッコは、自分の弱みを見せたくないために、都会の自慢ばかりしてしまい、山の子どもたちはおこってしまいます。そのあげくが「くやしかったら…」ということになったのです。一人で遊ぶトッコ。ままが恋しくなり「ままーつ」と、緑の山に向かって呼びます。すると、自分そっくりの声が返ってきます。あれは、やまびこだよと、おばあちゃんが教えてくれました。トッコは、楽しくなって山に向かって「おーい、やまびこーっ」と呼びかけると、目の前をカッコウがよこぎり、思わず目をつむり、こわごわ目を開けます。すると、そこにカスリの着物を着た男の子が立っていました。「あら、あんた、いつきたの?」とトッコが聞くと「あら、あんた、いつきたの?」と、男の子が言います。「おかしな子ね」「おかしな子ね」「こらっ、まねするな」「こらっ、まねするな」…笑いながらトッコの真似をする男の子。トッコは、男の子を追いかけるます。知らないうちにトッコは、つりばしをとんとん渡っていました。つりばしはゆれましたが、トッコはもうこわいと思いませんでした。男の子は林の中へ駆け込んで行きました。すると、そこに山の子どもたちが茂みから顔を出して、「おめえ、つりばしわたれたから、いっしょに あそんでやるよ」と言います。それからです、トッコは山のくらしが楽しくなりました。トッコはもう一度男の子と遊びたいと思いましたが、いくら呼んでも遠くの方で真似をするだけで、もう姿は見せませんでした。
このお話の中で、トッコと男の子が真似っこをするところが、とても面白いところです。お互いの目を見ながら、相手の言葉を真似る。思わず吹き出してしまいますが、その後は、なんだか「ちょっと、仲良しになれたかな」という温かい気持ちになります。トッコは、自分と向き合ってくれる男の子に心を寄せました。寂しかった気持ちを、パっと明るくし、元気をくれたカスリの着物を着た男の子。すごいなと思います。
園生活の中で、子どもたちは様々な思いで過ごしています。その時々の気持ちを明るく受け止めて、「男の子」のように楽しく接していきたいと思います。